2013年6月24日月曜日

簡易ROVの製作(1)-概要

 ブログの更新はさっぱりだが、その間も細々と船殻テストをやっていき、なんとかよさそうなレベルになったので、そろそろスラスター開発に移るか・・・と考えているときに、ふと思い立った。

一番安くできる水中ROV(=Remotely Operated Vehicle、意訳だと遠隔操作探査機)って、何なんだろう?

 おそらく水中ロボットコンテスト2013では、gagaさんがラジコンとしてコストパフォーマンス最高のもの(参考:http://gagataros.blog35.fc2.com/blog-entry-47.html#trackback)を持ってくる。

 でもラジコンではいいけど、僕たちの大会の主役はROVとAUVなのです。(とはいえ、gagaさんの機体が優秀すぎて、勝てる気がしない)

 そして僕は、AUV(=Autonomous Underwater Vehicle、自律型水中探査機)とROV、どっちにもできる機体を作りたい。できるだけ安く。

いきなりですが
御託はいいので、技術解説早くしろ
という、いつもの声がしたのでとっとと解説します。
 

コンセプト

  • 安い機体で、加工も簡単、材料も手に入りやすいもので
  • AUVにも、ROVにも(将来的には)なれるように
  • つまり、スラスター(推進器=水中だとスクリュー)とカメラを積んでいればいい
 と、こう考えると、
  • 映像を送る=有線に決定(2013年現在、水中で大容量のデータを音波や電磁波で送れる技術はまだない)
  • 安く=船殻は塩ビ管、スラスターはタミヤの水中モーターで決定
でもこんな考えも突っ込んだ。
  • できるだけメンテナンスしやすく。そして、あとで簡単にいろいろ試せるように、できるだけアタッチメントを多く。

機体解説

機体の全体はこんな感じ。

見れば大体わかると思うが、説明を加えておく。
  • 右側から出ているのはLANケーブルとUSBケーブル、各モーターへの出力ケーブル。
  • LANケーブルには1.5~6Vのモーター駆動用電圧をそのまま流し、中で各モーターへ分けた後、各モーターへ送る。そのため内部にバッテリーは積んでいない。
  • 内部のUSBカメラの情報はそのままUSBケーブルで送る。もちろん長さは足りないので、内部で継ぎ足してある。
  • スラスターは3機で、左右に1機ずつ、これで前後進と左右の方向転換をする。残る1機で上下へ。
  • 船体(一番太い筒)は全長およそ300mmで、写真左側のカメラ用窓のついた船体と、ケーブルなどを通して樹脂(今回はアラルタイトを使用)で固めたフタからなる。
  • スラスターは、アダプター部分・モーターとスクリュー部分・その2つをつなげる胴体部分になっている。モーター・スクリューなど、写真の青い部分はタミヤの水中モーターの電池部分を切ってそのまま使っている。
  • ペットボトルは、ケーブルの重さを補完するもの。これは実際にプールに沈めるまで気づかず、当日朝に一番小さいペットボトルを買って浮力調整用とした。
以下は作っている途中で気づいたこと。
  • スラスターの固定には、建築用金物を使用している。これとケーブルの重さで、全体ではわずかにマイナスの浮力となる。
  • 防水にはホットボンド、バスボンド(バスコーク)、アラルタイト(2液タイプの接着剤)を使用した。
  • ホットボンドは主に仮固定に有効で、大きな穴も技量があれば比較的簡単にふさぐことができる。ただし隙間穴ができやすく防水には不向き。塩ビにもくっつかない。
  • バスボンドは、防水効果が高い。ただしパテの使い方が難しい。塩ビにはくっつかないが、方面をヤスり、隙間を埋めるような場所に使うことができる。
  • アラルタイトは塩ビにも対応しており、高価だが便利。しかし液体状なので、「池」を作らないとすぐに流れてしまう。ホットボンドで池を作ると楽かもしれない。
  • 緑色のテープは補修に使ったもので、バスボンドは塩ビにくっつかないため剥がれるだろうと予想して持っていったもの。結果、メンテナンス中に2つのスラスターで剥がれた。

結果と考察

書くのがだんだんめんどくさくなってきたので、ここも一気に。
 

 結果は、プール最低部から水面までを行き来することができ、また目標の方向に行くこともできたため、一応の成功であった。
  • 防水部分はホットボンド、バスボンド、アラルタイトのすべての部分で浸水が確認された。理由を以下に述べる。
  1. ホットボンドは、基本的には防水機能を果たしたが、ケーブルの曲がりに耐え切れない部分があり、何回か曲げが繰り返された結果、ケーブルとの間に隙間が空いてしまった。これは、ケーブルの長さに余裕を持たせたり、「添え木」としてケーブルを金属棒に巻きつけるなどして解決できる。
  2. バスボンドは、塩ビ以外のプラスチックにもくっつきにくい(アクリル対応のものを使用していた)ことがある。構造上剥がれにくいところでの使用に限定したほうが良い。
  3. アラルタイトは、基本的に有効である。ただし今回は主剤と硬化剤を混ぜてから1時間後(説明書内での最短硬化時間)に沈めたため、ホットボンド同様ケーブルに引っ張られた影響で穴ができてしまった。これも硬化時間を十分にとる・ケーブルに処置をすることで解決できる。
  • 浮材として取り付けたペットボトルが発生させた浮力は、あとで測定したところ重量にして62g分であった。この分だけ浮力を増すように船殻を長くすれば、浮材は不要になる。
  • ケーブルの重さ補完・ケーブルのやわらかさについては、機体重量が軽く、またスラスター出力も小さいことから選定・開発が非常に重要であることがわかった。
  • ユニット化することによって、メンテナンスや浸水チェックが過去の機体に比べて非常に楽であった。今後もこの方向で行きたい。
  • またユニット化によって、今回の反省点はすべて部品単位(ケーブル防水部分のみ)の交換で済むこともわかった。これは工数も予算も削減できる強みになる。
  • 今回はLANケーブル内にUSB信号を流すことに失敗したが、「使用したのが撚り線だからではないか。フラットケーブルを試してみては」との意見をいただいた。重量、柔軟性においてもフラットケーブルは優秀でありそうなので、次回までにフラットケーブルのテストを済ませる。
  • 今回、コントロールシステム(コントローラ、PC)をすべて手元に置くことで、たとえば電圧によるスラスタ出力調整や、カメラの解像度設定をすべて動作中に行うことができた。これも、試作品開発にとって大きな強みになるのではないか。
という結果になった。この結果を踏まえて防水部分とケーブル部分を改良し、次回のAMMミーティングへ持っていく予定である。

また、まだ制作費の計算をしていないため、制作費についてなるべく早く記事を書きたい。


駄文ですが、ここまでお読みくださりありがとうございました。
誤字脱字・指摘やアイデア等ありましたら、コメントやツイッターなどでお知らせください。


おまけ:他の撮影画像。プール底に書いてある赤線など、参考までに。

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